【講演テーマ】
肩関節周囲炎の鍼灸臨床
-現状と課題-

東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科
・同大学院保健医療学研究科 教授
水出靖 先生
みずいで やすし
【略歴】
<学歴>
1988年 筑波大学附属盲学校理療科卒業
1990年 筑波大学理療科教員養成施設卒業
1991年 同臨床専攻生修了
2005年 放送大学教養学部卒業
2012年 筑波技術大学大学院技術科学研究科保健科学専攻修了 修士(鍼灸学)
2017年 筑波大学大学院人間総合科学研究科3年制博士課程 スポーツ医学専攻修了 博士(スポーツ医学)
<職歴>
1991年 東京大学医学部附属病院 物療内科 文部技官
1996年 筑波大学附属盲学校理療科 教諭
2009年 東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科 准教授
2013年 同 大学院保健医療学研究科 准教授
2022年 同 教授
現在に至る。
<研究分野>
・運動器疾患に対する鍼灸手技療法
・鍼灸手技療法の教育
<社会活動>
(公社)全日本鍼灸学会諮問委員
(公社)全日本鍼灸学会関東支部学術委員
現代医療鍼灸臨床研究会理事・編集部長
【水出靖先生のご著書】
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図解鍼灸療法技術ガイド 鍼灸臨床の場で必ず役立つ実践のすべて Ⅰ・Ⅱ(分担執筆) 文光堂 2012年
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生活と疾病Ⅱ 臨床医学総論 第2版(分担執筆) 東京点字出版所 2014年
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鍼灸臨床最新科学 メカニズムとエビデンス(分担執筆) 医歯薬出版 2014年
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新版 東洋医学臨床論(はりきゅう編)(分担執筆)南江堂 202
肩関節周囲炎の治療は病変部位、拘縮の有無、疼痛・可動域制限の原因となる軟部組織の状態等に応じて行う。疼痛や可動域制限の要因はfreezing phaseでは腱板や上腕二頭筋長頭腱、腱板疎部等の炎症やこれに伴う筋攣縮が主体となる。frozen phaseでは、炎症の遷延に伴い疼痛が増強するとともに、軟部組織の線維化 、癒着、瘢痕化等の器質的変化による拘縮が可動域制限の要因となる。このためfrozen phaseに至ると短期間での機能回復が困難となるので、拘縮のない早期に治療を行うことが望ましい。
近年、多くの肩関節疾患で肩甲骨の運動や位置の異常が認められ、Scapular dyskinesis(SD)として腱板病変との関連性において注目されている。SDの要因としては、小胸筋の短縮、僧帽筋や前鋸筋活動の異常、後方肩関節包のタイトネス、胸椎のアライメント異常等が挙げられている。日常臨床においてこの様な所見の改善を図ることは、肩関節症状の軽減だけでなく将来の発症予防に繋がる可能性がある。今回は肩関節周囲炎の概念及び我々の行っている診察・治療の概要とともに、このような発症予防の可能性について近年の研究をもとに考察する。