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​【講演テーマ】

作用機序から考える明日から使える施術部位の選択法

-消化管機能を中心に-

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東京有明医療大学 保健医療学部 鍼灸学科 講師

谷口 博志 

​たにぐち ひろし

​【経歴・資格】

学歴:

 2002年 明治鍼灸大学 鍼灸学部 卒業

 2004年 明治鍼灸大学大学院 博士前期課程 修了(修士:鍼灸学)

 2007年 明治鍼灸大学大学院 博士後期課程 修了(博士:鍼灸学)

職歴:

 2007年 明治鍼灸大学 基礎鍼灸学教室 助教

 2007年 Duke University 特別研究員

 2008年 Medical College of Wisconsin ポストドクトラルフェロー

 2008年 明治国際医療大学 基礎鍼灸学講座 助教

 2017年 東京有明医療大学 保健医療学部 鍼灸学科 講師 

                           現在に至る

​【谷口 博志 先生からのメッセージ】

 臨床において、どの部位を治療点とするかは永遠の課題である。正解がないからこそ、より正解に近づくための工夫が求められる。しかし、経穴は正経に属するものだけでも361穴あり、仮に2穴を選ぶだけでも13万通り弱の組み合わせが存在する。このような膨大な選択肢の中で、日々の臨床において指針となるものを求めると、①自らの経験の蓄積、②文献に基づく応用、③作用機序に基づく推測の3つが考えられる。

 鍼灸の作用機序には、鎮痛作用、筋緊張の緩和、局所血流の増加、内臓機能の調節などが挙げられる。このうち、内臓機能の調節は「体性―自律神経反射」によって説明される。体性―自律神経反射とは、体性感覚神経の興奮を起点として反射的に自律神経活動の変調を引き起こすものであり、刺激部位によって反応性が異なることが示されている。具体的には、自律神経の細胞体が脊髄側角に存在する領域への刺激では分節性(ただし、上脊髄性の反応も含まれる)に自律神経活動が変化し、その他の領域への刺激では上脊髄性の変化が生じやすいことがわかっている。

 消化管運動を例に挙げると、胃運動や近位結腸の運動性は、体幹部への刺激によって交感神経が興奮し、抑制的に作用する。一方、四肢への刺激では副交感神経(迷走神経遠心路)が興奮し、亢進的に作用する。また、遠位結腸の運動性については、四肢や仙骨部への刺激が副交感神経(骨盤神経遠心路)を興奮させ、変調をもたらすことが知られている。

 本講座では、刺激部位の違いによる反応性の違いを、上部消化管および下部消化管の愁訴を中心に、作用経路の違いから概説する。また、近年我々が明らかにしてきた、腹部の深層筋への鍼通電刺激が結腸の平滑筋の活動性に変化をもたらすことについても紹介する。本講座を通じて、治療点の選択の一助になればと考えている。

 なお、実技では、仙骨部(中髎穴)への刺鍼法および腸骨筋への鍼通電刺激の方法を供覧する予定である。

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